2013年11月4日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第21回です。

【俳句】 

 屋根にある・猫だけの道・秋高し  (横浜市 松永朔風) (稲畑汀子選)

 (平凡になりがちの「秋高し」、猫の世界で脱したわけだ。) 

 大寺の・萩に触れざる・道はなく (松原市 加藤あや) (稲畑汀子選)

 (本句が提供する萩の咲き乱れる様、咲きこぼれる様は萩を好む人びとの共感を呼ぶであろう。)

 蓑虫の・恥ずかしさうに・顔かくす  (名古屋市 田中芳子) (長谷川櫂選)

 (蓑虫に今やとんとお目にかからぬが、亡き母と同姓同名の作者の名とともに、子ども時代を思い出させてもらう。 

【短歌】

 若き日の・よいとまけせし・おほははの・荼毘のかひなの・太き骨見つ 

  (埼玉県 小林けい子) (馬場あき子選)

(歌われている「こと」の骨太さに対して仮名づかいのはかない感じが鎮魂の心を伝える。)

 五月までに・死ぬと言われて・十月に・かき氷のむ・鰯雲の下

  (茅ヶ崎市 相澤孝七) (佐佐木幸綱選)

 (この世の運行の重い外れと軽い外れの同居のおかしみをとらえて妙。)

 午前に母・午後から父を・見舞う日の・ランチを選ぶ・パソコンの中  

(水戸市 兼子マヤ) (高野公彦選)

 (重い日々の中にあまりに現代的な様相を発見した、この歌もおかしみを歌う。)