2013年7月1日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第3回です。
【俳句】
水面の・国美しき・飴ン坊 (東京都 保坂満) (長谷川櫂選)
(この句には不満がある。「飴ン坊」は「あめんぼう」のほうがいい。「あめんぼう」のイメージに合っているはずだ。次の句と同様、直近の体験があったので掲載する。)
夕立ちや・むかし我が家は・トタン屋根 (別府市 河野靖朗) (大串章選)
(前句コメントのとおりで掲載。雨音はさまざまだが、それぞれ記憶を呼び覚ます。俳句を記憶の文学だと語った人がいた。)
激痛は・消えしや黄泉は・涼しきや (新発田市 吉田敦子) (金子兜太選)
(俳句は呼びかけもできる。あの世の人へも。)
淋しさの・一茶は雀・我は蟻 (札幌市 岩本京子) (金子兜太選)
(孤独感を「軽み」でまぶす。俳句がもたらすことのできる世界をフルに活用している。)
【短歌】
さみしさを・生きる証(あかし)と・雨の夜は・独りで酒を・飲んで華やぐ
(生駒市 宮田修) (佐佐木幸綱選)
(選評にも触れられているが、西行の「問ふ人の・思ひ絶えたる・山里の・さびしさなくば・住み憂からまし」(意味を採りやすくするために勝手に漢字を当てている。)を踏まえた歌。「さびしさ」を「生きる証」とするアイデア賞は西行のほうにあるが、「独りで飲んで華やぐ」世界を共にする者として掲載。)
もこもこと・みどりの山は・ボリューム増し・君の上腕・陽にかがやけり
(兵庫県 高垣裕子) (佐佐木幸綱選)
(「孤独」を歌う前句と次句に挟まれた生命感あふれる青春の短歌。「もこもこ」が「山」にも「上腕」にもかかり、「ボリューム」も「山」にも「上腕」にもかかり、「陽に輝く」のも「山」であり「上腕」でもある。一気に詠まれたのか、作為を感じさせない。)
ふたりとは・ひとりとひとり・さみしさの・壷と壷とに・水を汲みつつ
(福島県 美原凍子) (永田和宏選)
(「壷と壷」、「水」で「孤独」の透明、静謐が伝えられる。作者の名前までがその効果を増す。)