2013年5月22日

 都知事イノセが政府の産業競争力会議に日本の標準時間を2時間早める提案をするという。

 その日の金融市場の取引開始が世界で一番早い都市にしたいというのが提案の理由との報道だ。(以下のとおり、少し話が合わない。)

 ここで金融市場とは外国為替市場のことと思われるが、日本時間で言って、ニューヨークが夏は朝6時まで、冬は7時まで開いている(日付は前日)。東京は9時が取引開始だ。その間の取引はウエリントンがニューヨークと1時間の重なりをもって、夏は5時から、冬は6時から、シドニーがニューヨークにつながるかたちで夏は6時から、冬は7時から取引が開始される。

 猪瀬の提案は2時間早めるということだから、冬のシドニーに並びたいということで、ウエリントンよりは遅いし、夏のシドニーよりは遅いことになる。(ウエリントンに対抗するために4時間早めるのはさすがに遠慮したようだ。)

 しかし、そんなことはどうでもいい。

 東京の取引開始時間が早くなることで金融市場のみならずその関連産業も潤うことになるのであろう。(その試算は東京オリンピック招致と同様示されていない。)

 それが事実であるならば、それはそれで結構なことだ。

 しかし、取引開始時間を早めるためには、それによって利益を得る金融業界の中で開始時間を早めればいいだけの話のはずだ。

 なぜ日本の標準時間を一部の業界の利益のために変えなければいけないのだ。

 おそらくその理由は、社会のインフラとなっている産業、すなわち交通機関や朝食を供給するコンビニ、ファーストフード店、さらには朝のごみ収集などのもろもろのサービス事業を金融業界の都合に奉仕させるためには、標準時間を早めることがいちばん手っ取り早いということにちがいない。

 それはすなわち、金融業界が自らコストを負担することを避けつつ関連産業を朝から働かせて自分たちの利益を上げようとしていることを公的に後押しすることだ。

 そして言うまでもなく、標準時間の変更は、金融業界とはひとかけらの関係もない全国津々浦々の人々にも大きな影響が及ぶ。

 そのコストは莫大なものであるはずだ。(これまた東京オリンピック招致と同様、まったく示されていない。)

 また、コストのこととは別に、長い歴史の中で積み上げられてきた我々日本人の生活を、わけのわからないことのために混乱に陥れることは、文化的観点からも生活感情からも(たぶん医学的観点からも)、まったく許しがたいと言わなければならない。

都知事イノセよ、あなたはいったいどこの誰なのだ?あなたは誰の奉仕者なのだ?兜町の町内会長か?

(他者批判においてスルドイところを見せていたと記憶するが、提案側に回ると、六本木・渋谷間都バス終夜運転提案に続き、その拙劣は今回もあまりにもひどい。西の首長は既成右翼を困らせるようなヘンテコリン右翼だし、東の首長は世の中が見えないガリガリ亡者だ。もちろんこれは選んだ選挙民の責任である。)