2013年4月9日

 競馬法のおもしろいところの2点目である。
 競馬は2つの種類の賭博を含んでいる。
 ひとつ目は、いうまでもなく馬券を買って当たったら配当金を受けるという賭博である。一般競馬ファンとJRAとの間のお金のやり取りである。
 もうひとつある。競馬の歴史からすれば、こちらのほうが原点である。すなわち、馬主同士の自分の馬をめぐっての賭博である。
 競馬法は刑法適用除外のための特例法であるから、このふたつの賭博を合法化している。馬券の関係を合法化しているだけではないのである。
 下に掲げる競馬法第18条(特別登録料)がこの馬主同士の賭博合法化の根拠規定である。

「第18条 日本中央競馬会は、農林水産大臣の認可を受けて定める中央競馬の競走に馬を出走させようとする者から、300万円以下の特別登録料を徴収することができる。
2 前項の規定により徴収した特別登録料は、これを前項の競走の賞金の一部に充てなければならない。」

 馬主が獲得する競馬賞金のうち付加賞というのがこれであり、この原資はステークス・マネーといい、一般競馬ファンの拠出によるものではないのである。
 なお、地方競馬に関してはこの第18条にあたる規定はなく、したがって地方競馬の馬主同士の賭博は合法化されていない。

 おもしろいところの第3点目は競馬法ではなく、日本中央競馬会法の規定である。
 一般に特殊法人、独立行政法人の役職員は、それぞれの設置根拠法において、刑法その他の罰則の適用については公務員とみなすとされている。(正確には「法令により公務に従事する職員とみなす。」)
 事実上は収賄罪を適用するためのはずだが、この規定がJRAについては、ない。といっても収賄罪がないわけではなく、「みなし公務員規定」がないのであって、次のように日本中央競馬会法でわざわざJRA役職員にとっての収賄罪を作っているのである。

「「第37条  競馬会の経営委員会の委員又は役員若しくは職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、3年以下の懲役に処する。これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、5年以下の懲役に処する。 」

 同様の例はNHKである。一方、地方競馬の開催援助業務を行う「地方競馬全国協会」には「みなし公務員規定」がある。
 他の団体と同様JRAとNHKに対しても「みなし公務員規定」を置けばそれで済むことと思われるが、なぜJRAとNHKが例外なのであろうか?
 ギャンブルを主宰する組織と娯楽番組を制作する組織に対しては、その仕事を公務とみなすことに立法の過程において躊躇があったのであろうか?

 以上の3点、「おもしろいところ」と紹介したが、おもしろくない人にはおもしろくもないことばかりであったかもしれない。