2013年2月17日


 

ちと先走りの感もあるが、ここのところ目にとまった老いの心境を詠んだ詩を紹介しておきたい。
 漢詩の読み下しは筆者のものゆえ、正確さに自信はない。

 とふ人の思ひたえたる山里の さびしさなくば住み憂からまし 

                         (西行)

 やさしくてやがてきびしきほとけかな 

              (読み人しらず)

 回首七十有余年   首(こうべ)を回(めぐ)らす七十有余年
 人間是非飽看破   人間の是非を看破するに飽く

                          (良寛)

 世の中にまじらぬとにはあらねども ひとり遊びぞ我はたのしも

                          (良寛)

 兀々陶々六十春
 無官無禄自由身
 悠然飲酒悠然酔
 真是太平無事人         (亀田鵬斎)

 いきどほる心われより無くなりて 呆(ほ)けむとぞする病の牀(とこ)に 

                          (斉藤茂吉)

 已甘休萬事    已(すで)に甘んじて萬事を休す
 采蕨度残年    蕨を采(と)りて残年を度(わた)らん

                         (寒山詩)

 重巌中     重巌(ちょうがん)の中
 足清風     清風足る
 扇不揺     扇揺らがさずして
 涼気通     涼気通る
 名月照     名月照り
 白雲籠     白雲籠る
 獨自坐     独り自ら坐す
 一老翁     一老翁

                 (寒山詩)