2012年10月14日

竹島と尖閣について、我が国は「無主地先占」という考え方によって我が国の領土であることの根拠としています。
 「『国際法』に照らしても我が国の領土であることに疑問がない」というような言い方をする時の『国際法』とは、そういう成文法があるわけではなく、「無主地先占」が領土取得源泉のひとつとして国際的に認められていることをこのように言っているのです。

 さて、「無主地先占」という考え方が竹島、尖閣に適用できるか、なかなかむずかしい問題をはらんでいるのではないかと考えられます。
 「無主地先占」という考え方の元型的イメージは、「絶海の無人の孤島を初めて発見し、その孤島の領有を諸国に対して宣言する。その場合、その島は宣言をしたその国家の領土となる。」というものです。
 そして、「無人」という点に関しては、所有権という観念が未熟であり、かつ国家という観念をもたない人々、いわゆる未開人、「化外の民」はこの場合の「人」とはみなされないという内容も含まれていたと考えられます。
 要するに、「無主地先占」とは、植民地領有を争う帝国主義時代の考え方を基礎とする歴史的考え方なのです。

 我が国領有の根拠となる領有宣言にあたる閣議決定は、尖閣は1895年、竹島は1905年です。
 言うまでもなく、いずれの島もそれよりもはるか以前からその存在は知られていました。この時期になって初めて発見されたものではありません。

 存在は知られていましたが、当時、東アジアの近代国家体制が未確立な状態のもとで帰属が宙ぶらりんとなっていた島々であったというのが実態です。
 そのような島々に「無主地先占」の考え方を適用したもので、「無主地先占」の考え方のうち、初めて国家として領有を宣言したのが日本であったというのが我が国の主張であって、初めて発見したという点においては我が国領土の根拠とすることはできないのです。
 それでは中国(清)、韓国(朝鮮)はなぜ国家としてそれぞれの島の領有を宣言しなかったのか、と問えば、それぞれの言い分はありそうです。
 すなわち、尖閣については、直前まで沖縄及び周辺の島々の帰属について日清間で交渉が行われていたのであって、日清戦争で中断している間に日本が領有の根拠となる閣議決定をしてしまった云々であり、竹島については、もはや日韓併合直前の時期であり、領有宣言する力はすでに奪われていた云々ということなのです。

 「無主地先占」は対等な帝国主義国間の争いを裁く原理であり、両国間の力関係に大きな不均衡がある場合、その原理を適用していいのかどうか、むずかしい問題があると思われます。

 中国、韓国側も明確な領有権の根拠を示してはいないと考えられますが、仮に国際司法裁判所での争いとなった場合、我が国が「無主地先占」という根拠だけで勝負しようとするのであれば、楽観を許すものではないと考えられます。