2012年6月12日

 6月11日(月)石原慎太郎東京都知事の国会での発言が世間で歓迎されているようですが、とんでもないことです。

 東京都による尖閣諸島購入というニュースは、領土問題に関する国民の関心を高め、対中国警戒論を強める効果を果たしました。

 そして尖閣諸島の管理権を都が取得し、国によって制限されている国民の上陸を実現するというのが石原都知事の狙いだと思われます。

 しかし、それによって何を得ることができるでしょうか?

 中国の領有権主張が放棄されるはずはありませんから、結局、元に戻って、得られるものは領土問題に関する国民の関心の高まり、対中国警戒論の強化ということに帰着するでしょう。

 一方、ことが進行していけば、事態はそこで止まるわけではありません。

 まずは、東京都の土地購入手続きとして都の測量チームの尖閣上陸があります。石原知事は国の禁止があっても強行上陸すると語っています。

 これに対して中国の対応措置が考えられます。正規軍、官憲の対抗上陸、民間あるいは民間を装った対抗上陸が考えられます。ここに最初の直接衝突の危険があります。

 はじめが民間同士の直接衝突でも、それが尖閣諸島を舞台にして発生すれば、直ちに軍事衝突に発展するでしょう。

 測量段階での衝突がなかったとすると、尖閣諸島の都有地化、都による尖閣諸島の管理、決死隊的人々の上陸申請、都による上陸許可と進行します。

 この過程が進行しても中国の領有権主張に変化はないでしょう。引き続き、領土問題に関する国民の関心を高め、対中国警戒論を強めるという課題は継続します。

 そのためには、単なる上陸から恒久建築物の建設、上陸人数の拡大、永住化といった上陸内容の質的変化を図っていく必要があります。

 要するに、石原都知事の採用したストーリーは、中国に対する刺激のエスカレーションの継続という終わりなきストーリーです。

 これすなわち、日中両国民の直接衝突、軍事衝突の可能性の持続的増大というストーリーなのです。

 この結果得られるものは何か?

 領土問題に対する国民の高い関心と対中国警戒論の高まりです。しかし、実質的に得られるものは何もありません。尖閣諸島をめぐる問題は残ったままです。

 この結果失うものは何か?

 日中間の平和、相互経済利益、両国青年の多くの生命です。

 そして、日本が受ける経済的損失は、ユーロ崩壊、原発廃止による電力不足・価格高騰、財政破綻・国債大暴落といった考え得る経済危機の規模をはるかに超える規模となるでしょう。

 なぜ、石原都知事はこんなに割りの合わないことをしようとするのでしょうか?

 なぜ、国民を危機におとしいれるようなことをしようとするのでしょうか?

 合理的解答を見出すことは不可能です。

 都民、国民を愚弄した「自己顕示欲過剰金満老人ぼうやの最後の火遊び」としか考えられません。