2003年1月6日
酒豪の御老体S氏は、奥さんに先立たれ、ふたりの娘さんもすでに嫁ぎ、ひとり暮らしでした。完全酩酊に至るまで、すなわち、まったくわけが分からなくなるまで飲まないと気が済まないという酒の飲み方で、私も一時期かなりお付き合いをしましたが、その度ごとに私はクタクタにさせられるのでした。極めて危険な人物だったのです。
ある時、ついに台所の火の付けっぱなしでボヤを起こしたのですが、近所の人の通報で消防隊が到着しても、御当人はまだ酔っ払って布団の中でした。消防士がその御当人のところに踏み込んだ時、かっと目を見開いて彼は言ってしまったのです。
「他人の家に勝手に土足で上がるな!」