742回は「イリイチの依存欲求」でしたが、今回は似ている言葉で

「依存効果」です。
 この考え方を打ち出したのは、ガルブレイスというアメリカの経済
学者です。
 近代経済学は、消費者の商品選択はみずからの判断で(一定の
支払能力のもとで)最も満足が大きくなるように行われるという「消費
者主権」を前提に、その理論を構築しています。
 それに対し、ガルブレイスはそれは事実に反していると指摘してい
るのです。消費者の商品選択は、生産者側からの宣伝に依存して決
まってくる、消費者はその商品を買うように仕向けられている、このよ
うな事態を「依存効果」と名付けたのです。
 消費者が独立した主体であるかのように考える「消費者主権」という
のは幻想だということになります。
 消費者金融に依存して、商品を買いまくり、自己破産に至るような消
費者の続出、作られた流行に弱い消費者の商品選択など、ガルブレ
イスの指摘には十分うなずかせるものがあります。

 「依存欲求」「依存効果」、その内容はまったく別個ですが、いずれも
経済学の前提を根本から考え直させる重要な指摘だと思います。