2000年10月25日
イバン・イリイチという人が打ち出した考え方に「依存欲求」という
ものがあります。
我々の社会は、人々の欲求(はやりの言葉を使えばニーズ)をで
きるだけ充足させることが社会の進歩であり、発展であるという考
え方にたっています。イリイチの考え方は、これに対し重大な問題
を投げかけています。
ある新技術、あるいは新製品を社会が採用した結果、人々の何
らかの能力が低下あるいは喪失し、その低下、喪失を補うために
新技術、新製品に依存せざるをえなくなるような場合、それを「依存
欲求」というのですが、その充足は進歩とか発展とかいえるのだろう
かという問題提起です。
ペットフードを与えられるネコが、ネズミを捕ったり、近所のごみ箱
をあさったりする能力を喪失した場合、ネコ族にとって、この事態は
進歩、発展でしょうか。
ヒト族はネコ族をはるかに超えて、そのような状態にさらされていま
す。