2001年4月19日
「市場原理主義」という言葉があります。ヘッジ・ファンド(短期移動
を繰り返す国際的投機資金)の総帥ジョージ・ソロス著の「グローバル
資本主義の危機」で登場した言葉です。ジョージ・ソロスはマハティー
ル・マレイシア首相によってアジア経済危機を引き起こした犯人として
指名され、その名を更に高めました。元大蔵省財務官榊原英資は、
「市場原理主義」という言葉は、自分がソロスとの会談で言い始めた
言葉だと言っています。
この「市場原理主義」という言葉は、言うまでもなく「イスラム原理主
義」をなぞって作られた言葉です。その現実と遊離した観念的で過激
な主張によって「原理主義」との言葉が与えられたのです。ちなみに、
ダーウインの進化論を聖書に反するものとして学校で教えることは認
めないという「キリスト教原理主義」というのもあります。
さて、自民党総裁選です。朝日新聞の世論調査では小泉純一郎が
圧倒的人気です。その現状否定の歯切れのよさ、勇ましさが人気の
原因のようです。仮に首相となった時の政策がどうなるかは分かりま
せんが、現在主張するところでは「市場原理主義」の立場ということが
できるでしょう。「原理主義」の立場から既得権擁護の政官業の談合、
癒着構造をバッタバッタと切り捨てる姿勢が、拍手喝采を受けているの
です。
マスコミ登場の近代経済学者の多くも、小泉支持とは明言しないもの
の、小泉の主張を後押しする発言を展開しています。私の目にとまった
例外は、リチャード・クーと伊藤元重くらいです。
日本にとって不幸なのは、自民党総裁選の対立軸が、「市場原理主
義」の小泉と談合、癒着構造を引きずっている感じの他の3候補となっ
ていることです。「近代」と「前近代」という対立軸になっているのです。
望ましきは、「市場原理主義」とその原理に人間主義的、社会政策的
観点からの修正を施すという立場が対立軸になることであり、更に、「市
場原理主義」を克服して人間主義的、社会政策的観点の導入の仕方の
違いが対立軸になるということです。
ケインズは、その政策効果の限界からやや相手にされなくなってきてし
まいましたが、その思想の中核は「自由主義市場経済」(「市場原理主義
」がまさにその貫徹を主張している。)では社会はもたないというところに
あったはずであり、その考え方は現在でも有効です。