2001年4月25日
ダブル・バインド=「二重拘束」というのは精神病理学の言葉です。背
反する二つの行動原理にさらされると人は行動不能に陥って、精神分裂
病発症の原因になるとされています。
例えば、母親が幼児に対してある行動を要求する、要求するにもかか
わらず、幼児がそのように行動すると強い不快感を表わす、この結果、幼
児はどのように行動していいのか分からなくなってしまう、というような場合
です。
ところで、最近幼児に対して良い絵本を与えたり、読み聞かせをするの
が流行しているようです。そのこと自体は情操教育とか、感情教育とか呼
ばれるもので、賞賛すべきことであり、非難すべきことだとは思いません。
しかし、幼児期のそのような理想主義的な教育に続いて、競争主義的な詰
め込み式の知識教育とか、いわゆる偏差値重視の受験教育などが行われ
るという現状は、二つの教育方法の間の著しい背反性によって子供たちに
ダブル・バインドになってはいないでしょうか。
性善説的な立場に立つ、理想主義的な戦後民主主義教育と、実社会に
出てからの利害打算、権謀術数の渦巻く、人間不信の世の中、この二つの
間の人間観の差異に導かれる行動規範の違いが、戦後民主主義教育で育
ったいわゆる全共闘世代、現在50代になっている世代にとって、ダブル・
バインドになっていたのではないでしょうか。
「善、善のみでは善ならず」、こんな格言はなかったでしょうか。