2001年5月21日

  内田百閒(1882~1971)の「東京日記」(岩波文庫)から「南山
寿」「サラサーテの盤」を読みました。
  「南山寿」(1939)は、退職し、また妻を亡くした大学教師の話で、
超現実主義的な、何とも言えぬ不思議な世界の話であり、「サラサー
テの盤」(1948)は、大学教師と彼を訪れる死んだ友人の妻の話で、
これまた現実であるようなないような、ちょっとこわい話です。

  現在活躍している作家で古井由吉という人がいます。この人の作
品には、存在感が希薄で、しかし強い現実感があるという人々が登
場し、不思議な日常生活が展開します。
  内田百閒のこの二つを読んで、古井由吉は内田百閒に影響され
ているに違いない、ヒントを得ているに違いないという感じを持ちまし
た。そして、内田百閒も古井由吉もドイツ文学者であるということに
気づいて、その感じを更に強めたのです。

  ちなみに、黒沢明の映画「まあだだよ」は内田百閒を描いた映画
であり、古井由吉は日比谷高校出身で、世田谷の馬事公苑の近く
に住んでいて、先日上京の折りの午前中、馬事公苑に遊びに行っ
たところ、馬事公苑の前の広場でひとりで体操をしていました。