2011年10月26日
23日(日)NHK教育テレビ(最近「Eテレ」とかいうらしい。)で「東西浪曲特選」という番組が放映されました。
中に対談がありました。東大出で、タレント出身の異色の浪曲師春野恵子さんと、この方も異色と聞く芥川賞作家町田康氏のお二人。
町田康氏の作品で僕の知るのは浪曲「河内十人斬り」の事件を小説化した「告白」です。
小説「告白」は、したがって「河内十人斬り」は、実際にあった事件を題材としたもので、やくざ、ばくち打ち、外道、ワルの世界に生きるメチャクチャな人間のお話で、それはそれはおもしろいお話です。
メチャクチャな世界のメチャクチャな人間の、しかしリアリティのあるお話ゆえに、マットウな世界に生きる僕たちの、マットウな世界に生きるが故の、抑圧された精神を解放してくれるのです。
さて、この日放送されたのは4つの浪曲。
自分の息子を事故死させた加害者の若者を養子にして育てるという「日本の母」、貧困家庭の息子が母親に湯たんぽのプレゼントをするという「母ちゃんしぐのやだ」、大石内蔵助と浅野内匠頭夫人の別れを描いた「瑶泉院 涙の南部坂」、名人奇跡譚「円山応挙」。
それぞれが決してだめだというのではないのですが、肝腎のアウトロージャンルの物がすっぽり抜け落ちているのです。
実は、9月にも同じNHK教育テレビで「東西浪曲特選」が放送されました。
そしてこの番組で放送されたのは、「雪女」「左甚五郎 天王寺の眠り猫」「若き日の大浦兼武」「権太栗毛」。
やはり肝腎なアウトロージャンルがすっぽり抜け落ちているのです。
浪曲復興の姿勢をNHKが堅持してくれているのは誠にありがたいことです。
しかし、清水次郎長、国定忠治等の親分衆とそれを取り巻く子分の方々に活躍してもらわないと、浪曲はその真価を十分に発揮してくれません。
その世界が語られれば、浪曲は新規ファンをもっともっと獲得することができると思われます。
時あたかも暴力団排除条例施行の時期、NHKに自粛の精神が強く働いているものと推測されますが、もったいないことです。