以下の想定のようには世の中は動きませんでした。
2001年6月25日
憲法改正が徐々に現実の政治課題になってきています。
論点は、集団的自衛権を認めるかいなかを中心とした9条の戦争放棄
条項の取扱い、大統領制の導入、環境権の確立などなど様々です。現在
は経済の長期低迷からの脱出が大きな政治課題となっていますが、それ
が一段落すれば、あるいは議論が専門化して国民にあきられるようになれ
ば、ここ数年のうちに憲法改正が国論を分ける大政治問題になるでしょう。
最終的には国民投票になるわけですから、我々は難しい問題についての
態度決定を迫られることになります。
ところで、憲法改正の論点に天皇制が上がっていないことには疑問があ
ります。
一般世論の状況は、現状の天皇制を許容するというのが大勢のようで、
共産党を含めてどの政党も天皇制を問題にしておらず、検討課題とするこ
とは政治的タブーともなっているように思われます。
しかし、政治問題とはなっていなくても、思想界では天皇の戦争責任を
含めて天皇制の問題は一貫して問題でありつづけてきました。
(最近、「天皇の戦争責任(加藤典洋、橋爪大三郎、竹田青嗣)」が出版さ
れました(現在読み進めています)。また、来年には「裕仁と近代日本の形
成(ハーバート・ヒックス)」の日本語版が出版される予定です。)
私は、天皇制から政治性を取り除くことができるのなら(完全な除去は不
可能であり、程度問題ですが)、天皇制にあえて反対はしないという条件付
き消極的許容の立場ですが、今後の天皇制の政治化には大きな危機感を
持っています。
「トラの威を借りるキツネ」という、たしかイソップ童話があります。
天皇制が「トラ」であっては絶対困ります。天皇制は、少なくとも「トラの毛
皮」でなくてはなりません。しかし「トラの毛皮」であっても、それを悪用しよう
とする「キツネ」がいる場合には、「トラの毛皮」の存在自体が危険だと考え
ざるを得ません。その場合は「トラの毛皮」はどこかにしまってしまったほう
がいいと考えています。
今後の日本経済については、小泉首相の構造改革がかなりの程度実施さ
れたとしても、私は悲観的です。おそらく薄暗い状況が続くでしょう。
「キツネ」が獲物を求めてうろうろし始めるのはそのような時間帯なのです。