2001年6月27日
貧乏・空腹の中で人からもらったせっかくの食べ物を落としてしまい、
それを拾い集めるという惨めな場面を二つ知っています。
一つは樋口一葉の「にごりえ」の中に出てきます。
記憶に残っているのは、「にごりえ」を映画化したもので、白黒の暗い
映像でした。映画通の方はこの映画を多分ご存知でしょう。夜の雨の中、
もらってきたのか、借りてきたのかのお米を、一葉本人がモデルと思わ
れる少女が、お歯黒どぶ(?)に落としてしまい、それを手ですくうという悲
しい場面です。
もう一つは、勝海舟で、小学生用の伝記で読んだのですが、おそらく
海舟の自伝「氷川清話」にでも出ている話でしょう。
これもやはり夜、親戚からもらってきたモチを橋の上で落としていしま
い、真っ暗な中で拾い集め始めるのですが、なかなかはかどらず、海舟
はそんな自分が惨めったらしくなって、途中で止めて、川の中に全部蹴
込んでしまうという話です。小学生用の本には、この場面の挿し絵があり
ました。
現在振り返ってみて、この二つの話は私の生活信条の形成にかなりの
影響を与えているような気がします。