2001年6月28日
「悩む力」の低下、これが精神障害多発の原因になっているというユ
ング派臨床心理学者、山中京大教育学部長の話からの、以下は推論
です。
「悩む」とは、「悩みの原因」を「意識」の世界で取り扱うということだと
思いますが、「悩む」のを避けるためには次のような方法が考えられま
す。
(1) 「悩みの原因」がやってこないように門戸を閉ざす。
(2) 「悩みの原因」を心の奥(「意識」の下層にあるといわれる「無意識」
の領域)にしまい込んでしまう。
(3) 「悩みの原因」をもたらす相手を事前攻撃する。
(4) 「悩みの原因」が入り込んでくる余地がないように、他のことで心
(「意識」の領域)をいっぱいにする。
(5) ストレートに「意識」をなくしてしまう、殺してしまう。
(1)が、「自閉」とか「内閉」とか「引きこもり」とかいわれるものです。
(2)でしまい込んだはずのものが、身体現象となって発現するのが10
円玉禿げに象徴される心身症です。
(3)が「家庭内暴力」などの行為です。
(4)が、強度の潔癖症などの強迫現象です。
(5)が、覚醒剤、麻薬などの薬物依存、「意識」とともに「身体」まで殺し
てしまえばそれは自殺です。
かつては「悩み」が深きゆえに「意識」が耐えられなくて(1)~(5)に逃げ
込んだのですが(もちろん、(5)を除き意識的にではありません。)、「悩む
力」の低下により「深き悩み」に至る前にすぐに(1)~(5)の世界に入って
しまうのが最近の現象ではないかと考えられます。
朝のニュース番組から深夜のトーク番組まで、テレビの世界は「ネアカ」
一色です。「ネクラ」は仲間内で徹底的に嫌われます。「明るい」「朗らか」
「前向き」「健康的」「社交的」、身上調書の性格欄に、これらの言葉が自己
PRとして頻出します。
これらのことに象徴される、「悩み」を隠そうとする社会全体の雰囲気が、
「悩むこと」を忌避させ、「悩む力」を低下させ、多くの精神障害とつながって
いると考えられるのです。
(おことわり)
心理学とか精神病理学とかをちゃんと勉強していないので、使用単語の
適否に自信がありません。悪しからず。