「二度と戦争は起こしてはならないと思っている」「映画の戦争シーンは
見ていられず、顔を背ける」「心から平和を願っている」、自分はそういう
人間だから平和主義者であると考えている人が多いように思われますが、
とんでもないことだと思います。そういうあいまいな自己認識でいると、あ
る日突然、戦争を賛美する側に転換させられかねないと思います。

 次のうち、あなたはどれに該当するか考えてください。

(1) 国際関係は、対立抗争関係ではない。ゆえに日本が国際紛争を解
決する手段として戦争をすることはありえない。

(2) 国際関係は、対立抗争関係ではあるが、各国国民と指導者は究極
的にはみな平和愛好者である。ゆえに日本は国際紛争を解決する手
段として戦争をすべきでない。

(3) 国際紛争は、いかなる場合においても平和的に解決されるべきであ
り、戦争によって解決されるべきではない。そのために日本はいかな
る理不尽、いかなる犠牲も甘受するべきである。

(4) 国際紛争は、平和的に解決されるべきだが、一部の「ならず者国家」
たとえばイラクのフセイン、アフガニスタンのタリバーン、北朝鮮の金正
日、ユーゴのミロシェビッチののような指導者に指導された国が戦争を
仕掛けてくる場合は戦争もやむをえない。

(5) 自衛のための戦争はやむをえない。ただし、国土に侵略があった場
合にのみ戦争を認めるのであって、在外邦人が大量虐殺されたり、在外
財産が奪取されるような場合でも、軍事的手段に訴えるべきではない。

(6) 自衛のための戦争はやむをえない。この場合の自衛とは、在外邦人、
在外財産の保護を含み、そのための海外派兵は認める。

(7) 日本は、国家としては戦争はしない。国際秩序の維持、日本の防衛は
国連のような国際機関に依存し、その国際機関の軍隊には日本が参加
する。

(8) 国際秩序の維持のために日本が戦争に参加することを認める。

  単純かつ粗雑のきらいはありますが、当否は別として、当初の立場から平
和主義の名に値するのは(1)~(3)あるいは(5)の場合であって、その他の
場合は、相当な注意をもって監視していないと、平和主義者のつもりでいても
事実上は侵略的戦争賛美者に転化するおそれがあります。

 ちなみに、日中戦争開始の前年、1936年の広田内閣決定「国策の基準」
(たいした決定ではなかったという説もあるのですが)には、「東洋の平和を確
保し世界人類の安寧福祉に貢献」とか「東亜における列強の覇道政策を排除
し、真個共存共栄により互いに慶福を頒たんとする」との平和志向的文言が
あり、日本のアジア侵略は(4)と(6)あるいは(8)の建前のもとで行われたので
す。