2001年8月16日
参院選全国区最高得票者升添要一が日銀に通貨発行の量的緩和拡大
を求める「インフレ・ターゲット論」を展開し始めていて、それを批判しようと
思っていた矢先に、日銀が量的緩和拡大を発表しました。
資金需要がないときに(この場合の資金需要とは、「返済可能」という条件
がつく資金需要です。)資金供給を拡大しても、景気回復に何の役にも立た
ないことは明らかであり、日銀はそのことを十分に承知しているはずです。
にもかかわらず、日銀はなぜ量的緩和拡大に踏み切ったのでしょうか。
量的緩和拡大に批判的な論調では、景気回復策を持たない政府が日銀の
金融政策にその責任を押し付けようとする強い圧力を加えたことをその原因
に上げています。
私は、今回に日銀の決定は、北条秀治作「王将」の主人公坂田三吉の「2五
の銀」にあたるのではないかと思っています。
坂田三吉は関根7段との対局で、進退極まって、先の読みなしに「2五の銀」
を打ち、関根7段は予想外の手にあわてて次の一手を誤り、結局坂田三吉の
勝利となります。
今回の日銀の政策は、この坂田三吉の「2五の銀」のようなものだと思うので
す。
誤った一手が誤った対応を誘って勝利を導くということがないわけではあり
ません。今回の日銀の一手は、そのように理解するほかはない、奇手としか
考えられません。
( ちょっとまじめに考えると、一時的な株式市場のてこ入れ、一時的な円安誘
導、一時的な政治圧力の回避というメリットがあり、そして株式市場も不動産
市場も余剰資金で活況を呈するようなバブル期のパワーはなく、この政策の
副作用は小さいとの日銀の読みはあったと思います。)