2001年10月19日
最近公開されたばかりの都下、町田市能ヶ谷にある旧白洲正子
邸(武蔵と相模の間にあるということで「武相荘(ぶあいそう)」と名付
けられている。)を過日訪問しました。
旧白洲邸は戦前に農家を買い上げたもので、里山の南面中腹に
位置し、まわりを雑木林に囲まれた、落ち着いた雰囲気の建物です。
しかし、歴史の皮肉というのでしょうか、旧白洲邸は小田急鶴川駅
からバスで二つ目の停留所近くにあって、周辺は宅地開発が進んで
おり、バス停から旧白洲邸に向かう坂道の登り口のところには、何と
「ユニクロ」があるのです。
「ユニクロ」の駐車場には、ここは「ユニクロ」の駐車場であり旧白洲
邸訪問者の利用は遠慮されたい旨の掲示がありました。
さて、問題は、現代消費文明、しかも直近の価格破壊の象徴でもあ
る「ユニクロ」に、日本の伝統文化、特に庶民が築き上げてきた「民芸
」の世界を現代に残している旧白洲邸が対抗しえているかということで
す。
旧白洲邸には、重厚な農家の建物の中に、陶磁器、藍染めののれ
ん、木工の卓、椅子、熊谷守一の書等々、素朴で美しい調度、装飾
がたくさんあり、ひとつの統一した世界を作り上げています。
しかし、それらは「いい御趣味ですね」というレベルにとどまり、「ユニ
クロ」に対抗しえているとは感じられないのです。
たぶん、その原因は、旧白洲邸のメッセージ力の弱さにあるのでは
なく、そのメッセージにもかかわらず「ユニクロ」に象徴される消費生活
をかたくなに変えようとしない、あるいは変えられない鑑賞者側にある
のでしょう。