2001年12月5日
向田邦子の高品質テレビドラマ「あ・うん(主演:杉浦直樹、フラン
キー・堺、吉村実子)」のテーマ曲であった「アルビノーニの弦楽とオ
ルガンのためのアダージョ・ト短調」を集中的に聴いています。
「バロック音楽」が現在、「癒し」系の音楽として多くの人々に愛さ
れていることに象徴されるように、教会を暗示する通奏低音のもと
で、そこにおける感情の表出は静穏であり、控え目なものです。
しかしながら、17世紀当時、それらの音楽は「バロック=いびつ
な、異様な」と呼ばれていました。
おそらく、中世ヨーロッパにおける教会秩序からすれば、現代の
感覚では極めてささやかなものでしかない感情の表出が人間的で
あり、個人的であること(それを生み出したのは都市であり、市民で
す。)に対して、教会秩序破壊的であり、共同体秩序破壊的なもの
として強い違和感があったためと思われます。
「ヒューマニズム」「個性の重視」「恋愛感情の尊重」といった現代の
我々の共通の理念が、歴史的に形成されたもの=特殊歴史的なも
のであることを、このことは示していると思われます。