2002年1月23日

河野多恵子著「半所有者」(新潮社)を読んで、2点においてとまどい
ました。

その第1点は、そのような人間関係、いや人・体関係があることは、
それを表わす言葉、「死姦」が存在することからしても理解できるもの
の、それが本書が説くような異性所有願望の究極的姿として欲される

という心理的メカニズムは果たしてありうるのかということです。

第2点は、主人公がその過程において「女体になり替わった」という
感覚を持つということがあるのですが、そのような感覚メカニズムが男
性サイドに果たしてあるのかということです。

川端康成「眠れる美女」、谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」が思い起こさ
れましたが、ともに男性作家によるこの二つの小説には問題に対する
カギがあるとは思われません。
とまどいの2点は女性作家なるがゆえにもたらされたものと推測され
るのであり、どのような小説になっているのかは知りませんが……映画
では大島渚の「愛のコリーダ」がこの事件を題材にしています……阿部
定事件という女性の犯罪にヒントが秘められているのではないかと思わ
れます。