2002年4月11日

代理母、第3者の卵子、精子提供による体外受精などの生殖医療
新技術についての世論調査の結果が最近発表されました。(NHKニュ
ースで報道されたのですが、新聞報道が見つからず、インターネットで
も見つからず、その具体的数字をここでお示しすることができません。)

私にとって、その結果は予想以上に生殖医療新技術の採用に否定
的なものでした。

さて、問題は、このような否定的世論がその根拠をどこにおいてい
るのか、ということです。
その根拠を明確化し、そのひとつひとつについてその妥当性、対応
の可能性を十分検証して、今後の生殖医療新技術の取扱いを決定し
ていく必要があります。問題を放置しておくことは、なしくずし的に既成
事実が積み重ねられて(生殖医療新技術に寛容なアメリカにおいては
事態は相当進んでいます)、結局必要な条件整備もなされぬまま、事
実上新技術が普及してしまう結果となることが予想されるからです。

否定的意見の根拠を推測すれば、次のようなものがあげられると思
います。

① 技術の安全がまだ完全には立証されておらず、母子、特に子ども
の健康に重大な影響を与えるおそれがある。
② 関連する法律制度が未整備であり、発生が予想される問題が処
理できる現状にない。(例えば、生まれてくる子どもについて条件を付
することが許されるか否か。その条件に反した子どもが生まれてきた
場合、依頼者に子どもの引取拒否権を認めうるか否か。原因が代理
母、卵子、精子提供者の過失による場合、不可抗力の場合、仲介医
療機関に責任がある場合などによって引取拒否権はどのような影響
を受けるか。)
③ 子どもの幸福を考えれば、生物学的母親(卵子、子宮の提供者)の
不一致は許されるべきでないし、 生物学的両親と社会的両親(育て
の親)は一致しなければならない。
④ 母体(子宮)の道具化は許されるべきではない。
⑤ 生殖の世界に人為が介入すべきではない。特にビジネスの対象と
されるべきではない。

すでに一定の技術が開発されている以上、また我々の社会では医療
が営利事業の分野に委ねられている以上、そして生殖医療新技術に対
する需要が存在している以上、生殖医療新技術を完全に規制すること
は不可能というのが現状でしょう。規制は「闇」を生み、かつ「闇値」をも
たらすことになると思われます。
このような現状を認めざるをえないとすれば、技術の信頼度を高める
ための技術開発の促進、予想される紛争(それはしばしば子どもの人権
を無視して争われます)を処理するための法制度の緊急整備が必要とい
うことになると思われます。

しかし、技術開発、法制度の整備さえすれば問題はないのか、あとは
自由にまかせてもかまわないのか、そのことについては次回に報告させ
ていただきます。