2002年6月14日

国際法の教科書には、「国」の基本的構成要素として領土が上げら
れています。
現実に世界には領土なき「国」というものは存在していないはずです。

しかし、このように「国」を面的にとらえる考え方は、少なくとも日本の
古代史を考えるに当たって、特に壬甲の乱以前の日本の状態を考える
に当たって、障害になっている可能性があると考えています。

言い換えれば、壬甲の乱以前の「国」と呼ばれているものは、近代的
な意味での「国」ではなかったと言えるのではないかと思われるのです。

すなわち、古代日本では、それぞれ起源の異なる諸部族、例えば新羅
系の部族、百済系の部族、高句麗系の部族、南方中国系の部族、北方
中国系の部族、縄文時代からの在来諸部族などが、それぞれに集落を
形成し、モザイク状に混在しており、それらを全体的に支配する者は存
在せず、外部(要するに当時の中国)からあるいは後世、国王と位置づ
けられたような者はこれら諸部族の長でしかないというような状態が長く
続いたのではないかと考えられます。

日本が面的な国に至ってから、その正統性を主張するために書かれ
た「古事記」「日本書紀」の記述、その影響を脱し得ない歴史教科書、そ
して近代以降の面的な国に充たされてしまった世界の状態によって、我
々の想像力はすっかり妨げられてしまっているのではないかと思われま
す。