2002年8月26日

 大経済学者シュンペーターが資本主義の発展の動力として創造的
破壊(creative destruction)という概念を打ち出し、新商品、新技術、
新供給源泉、新組織型が生み出されることの重要性を指摘している
ことは前回通信で触れたところです。
 そして、この指摘ゆえに経済停滞状態にある日本でシュンペーター
が人口に膾炙していると思われるのですが、シュンペーターの指摘は
次のようなことを証明する過程におけるものであったという皮肉を報告
しておかなければならないと思います。

 「 マルクスは資本主義社会が崩壊する態様についての診断におい
  て誤っていた。けれども、いずれにしてもそれが崩壊するであろうと
  いう予見においては誤っていなかった。停滞主義者たちは、資本主
  義的過程がなぜ停滞しなければならないのかという理由の判断に
  おいて誤っている。けれどもそれが……公共的領域からの十分な
  援助とともに……停滞するであろうという予断においては、なお正し
  いものと認定されるようになるかもしれない。」(「資本主義・社会主
  義・民主主義」の付録「その後の戦後展開への注釈『2社会主義の
  前進』」)

 そしてまた、シュンペーターは資本主義文明について次のような鋭い
洞察をしていた桁外れの大学者であったこともあわせて報告しておき
たいと思います。

 「資本主義過程は人間の行為と考え方を合理化し、そうすることによ
  ってわれわれの心のなかから形而上学的信仰とともにあらゆる神
  秘的・ロマン的観念を追放する。かくてそれは、われわれの目的達
  成の方法のみならず究極的目的そのものを新しく作り出す。」(「資
  本主義・社会主義・民主主義」第11章「資本主義の文明」)