2011年4月24日(出来たて)
20mSV(ミリシーベルト)というのは計画的避難区域設定の基準となる年間積算放射線量です。
計画的避難区域は、強制性において、罰則を伴う警戒区域とは法律的には異なります。
しかし、地域の人々には事実上強制として機能します。
故郷を捨て、生活を捨て、家族の離散にもつながる事実上の強制をこの数値を基準にして実施することは、正気の沙汰とは思えません。
そのことを説明します。
年間20mSVという数値は国際放射線防護委員会(ICRP)と国際原子力機関(IAEA)の基準値を考慮して設定したと政府は説明しています。
そして、政府は20mSVという数値の正当性の根拠をこの2つの国際機関が定めているということにのみ置いています。
年間20mSVという数字の算出過程、それが意味する健康被害が発生する危険度についての説明はまったくありません。
年間20mSVという基準を直接正当化するデータはないのです。
前回の通信でお知らせしたように短時間に強い放射線を浴びた場合のデータをもとに、かなり大胆な仮説(直線しきい値なし仮説、LNT仮説)のもとで推定した数値にすぎません。
また、その仮説から計算される年間20mSVの放射線の危険度は、がんの発生率を0.1%上昇させるというものです。(喫煙によるがん発生率の上昇は数10%というオーダーです。)
通常のがん発生率を50% とすれば(がん死亡率は30%程度)、通常1万人当たり5千人ががんとなるのに対して、年間20mSVの放射線で一万人当たり5人のがん患者が増えるということです。
数十年後に厳密な統計的処理によって析出可能かどうかというレベルの数字で、生活レベルで感知することができる現象ではまったくありません。
直接のデータがない以上、仮説をおいて推定することはやむをえないことです。
しかし、推定であり、かつ極めて低い危険であることは、実際に大きく生活を変え、深刻な犠牲を余儀なくされる地域の人々に十分に説明されなければなりません。
そして、どのように対応するかは、人々の自由な判断に委ねられなければなりません。決して一律に避難を強制しなければならないレベルの危険度だとは思えません。
付言すれば、国際放射線防護委員会は「社会的、経済的要因を考慮にいれながら合理的に達成できる限り低く被ばく線量を制限する」という考え方をその勧告において表明し、「社会的、経済的要因」への配慮を示しています。
避難による深刻な影響は当然「社会的、経済的要因」のはずですが、今回、政府はそのことにまったく言及していません。
安全と危険について確率的発想をせず、かつまたその確率の実態的意味を考えない思考法、安全と危険を白か黒かという二分法で考える思考法を早急に改めるように国民全体を指導しないと風評被害も永久になくなりません。
なぜ、正気の沙汰とは思えないような政府の判断がなされてしまうのか、それについては次回、私の仮説を披露します。