2003年3月21日
他の選択肢があるので絶対にありえないと思っていたアメリカのイラク
武力攻撃が始まってしまいました。
これで1940年代から始まっていた「パックス・アメリカーナ(アメリカによ
る国際平和秩序)」は完全に終わりを告げることとなり、「パックス・アメリ
カーナ」が保障していた世界的経済秩序は深刻な打撃をこうむるおそれ
があります。
「パックス・アメリカーナ」は3本の柱によって成り立っていました。
1つはアメリカの経済的優位、2つはアメリカの軍事的優位、3つは資
本主義対社会主義という東西対立です。
すなわち、資本主義諸国をその対社会主義恐怖からアメリカの経済力
と軍事力が救うという構図で「パックス・アメリカーナ」は成り立っていたの
です。
3本の柱のうち、アメリカの経済的優位と東西対立という2本の柱はす
でに失われており、「パックス・アメリカーナ」は終焉を迎えつつあったの
ですが、国際法秩序には従わないという宣言を事実上意味する今回の
アメリカのイラク武力攻撃によって明瞭にそのかたちが現われました。
19世紀の「パックス・ブリタニカ(イギリスによる国際平和秩序)」から20
世紀の「パックス・アメリカーナ」への移行に伴う無秩序と混乱は、第一次
世界大戦、第二次世界大戦という悲惨をもたらせました。
「パックス・アメリカーナ」はその成立条件が失われたことによって「パッ
クス・サミタス(主要諸国による国際平和秩序。私の勝手な造語)」へと徐
々に移行していたのですが、今回のイラク武力攻撃によってその平和的
移行が極めて懸念される状態となってしまいました。
「パックス・ブリタニカ」から「パックス・アメリカーナ」への移行に要した期
間はほぼ50年、「パックス・アメリカーナ」の終焉から次の世界秩序が構
築されるまで何十年かかるか分かりません。
その間、国際政治のみならず世界経済は深刻な無秩序と混乱を経験し
なければならない可能性が極めて強くなってきました。
アメリカは圧倒的軍事的優位という1本柱で「パックス・アメリカーナ」の
再建を狙っているようですが、それは不可能です。
世界各国は今回の事態によって「パックス・アメリカーナ」のスウィッチを
OFFに切り替えるでしょう。のみならず、「パックス・サミタス」のスウィッチも
OFFにしてしまうかもしれません。
私は、バブル崩壊全治30年と診断していましたが、世界経済秩序が危機
に陥るという条件を加えると、もはや日本経済が全治に要する期間を推測
することは不可能です。