2003年3月27日
前回は、心理学と気象学の類似について報告しました。今回は、観測を
妨げる条件を克服しなければならないという意味において、心理学と天文
学が似ているという報告をします。
天文学は、宇宙を対象にしてその運動、変化の法則を明らかにしようと
する学問です。
法則の解明には宇宙の観測が前提になります。その際、地球を覆って
いる大気が観測を妨げることになります。優秀な望遠鏡の開発によって
天文学は発展を遂げてきましたが、大気の存在が観測の邪魔をしてきま
した。
そして、今や、大気圏外に望遠鏡(ハッブル宇宙望遠鏡)を飛ばすことに
よって、大気の邪魔という問題を克服するようになっています。
一方、心理学は人間の精神を対象とする学問ですが、表面に現われる
人間の精神現象は、その基礎にある深く、広い無意識の世界によって規
定されていることが分かりました。
したがって、無意識の世界の探求が絶対に必要なのですが、無意識の
世界は「意識」という厚い雲に通常は覆われているので、なかなか直接に
観測することができません。雲が薄くなった状態、すなわち「意識」が弱ま
った状態が観測上貴重なことになります。
それゆえ、夢、精神疾患、酩酊状態等が心理学において取り扱われる
のです。
仏教における禅や荒行といわれる密教の修行も「意識」の働きを弱めて
自分の無意識の世界を究めようとする試みと理解することができます。
「わが心 深き底あり 喜びも
憂いの波も 届かじと思う」(西田幾太郎・分かりやすく書き換え)