2003年5月26日

 テキサスのブッシュ牧場における小泉・ブッシュの日米首脳会
談が和気藹々のムードで行われました(演出されました)。
 この背景には、言うまでもなく、仏、独、露、更には中国の不同
意という状況で、アメリカのイラク戦争に対して小泉首相が明確
な支持の態度をとったことがあります。
 日米首脳会談の報道には小泉外交の勝利という雰囲気が漂
っています。

 このような雰囲気の中で、より一層対米協力をしていけば日米
関係はさらに良好であろうとの判断のもとに、現行憲法の下で、
あるいは憲法を改正して、日本の集団的自衛権を認めていくべ
きだという意見が力を得ています。

 集団的自衛権とは、同盟国が攻撃を受けた場合に自国も参戦
することとすることにより、自国が攻撃を受けた場合に同盟国の
参戦を得て自国の防衛を図るという方法です。
 集団的自衛権は独立国の固有の権利ではあるが、現行憲法で
集団的自衛権の行使は禁止されているというのが現在の政府見
解ですが、政府見解を変えさえすれば現行憲法の下でも集団的
自衛権の行使は可能とする意見が最近目立つようになってきてい
ます。

 さて、良好な日米関係の維持という結果により、イラク戦争を支
持した小泉外交は成功との雰囲気ですが、そこには条件に恵ま
れたという要素があったことを忘れることができません。
 すなわち、イラク戦争が長期泥沼化しなかったこと、日本の集団
的自衛権行使の制約により日本が直接参戦することはできなかっ
たこと、仏、独等の不同意により日本は支持声明だけで大いにア
メリカに評価されたことなどです。
 もし、イラク戦争がベトナム戦争のように泥沼化し、ベトナム戦争
時に韓国、オーストラリアがアメリカとの相互防衛条約(集団的自
衛権の行使を定める条約)に基づき参戦を余儀なくされたように
日本が参戦することになっていれば、世論の雰囲気は現在とは大
いに異なっていたことでしょう。

 外交というものは、他の政策と同様に、TPOによってその成功不
成功が決まるものであり、一律にあるべき政策を論じることができ
ないものであることは言うまでもありません。
 論じられている集団的自衛権行使の場合の同盟国がアメリカで
しかない時に、アメリカの敵は必ず日本の敵という極めて強い一体
感がないかぎり、集団的自衛権の容認は、日本の外交カードを少
なくすることとなり、TPOに応じた柔軟対応を困難にする恐れのほう
が強いと思われます。

 友情の表現として「いさぎよさ」というのはかっこいいものですが、
身の回りでも過度に「いさぎよさ」を演じる人、また「いさぎよさ」を
相手に求める人というのは危なっかしいものです。