2003年6月9日

 いわゆる有事法制3法が成立しました。
 この有事法制3法の不十分性は、どうやら国民保護法制の
不十分さという点に絞られている雰囲気ですが、私としては次
のようなことが気になります。国会論議を十分にフォローして
いないので、すでに議論済みであるとすれば、不明をお詫び
するほかありませんが‥‥

1 有事法制3法は「武力攻撃事態」あるいは「武力攻撃予測
 事態」の認定から始まります。
  この「武力攻撃」というのは「我が国に対する外部からの武
 力攻撃をいう」と法律に定義されています。
  この場合の「我が国」とは何でしょうか。「我が国に対する
 武力攻撃」とは何でしょうか。
  領土が直接攻撃を受けた場合は当然として、在外日本国
 大使館が襲撃され、そこに外国政府が関与しているかもし
 れない場合は該当するでしょうか。外国滞在中の皇族、政
 府要人がテロの対象になった場合はどうでしょうか。海外日
 本人学校が襲われて多数の日本人児童が犠牲になった場
 合はどうでしょうか。
  日本への「侵略」ではなく、「排日行動」と考えられるこのよ
 うな事態は、有事法制3法に基づく自衛隊出動の対象となる
 のでしょうか。「救出」は現行法でも許容されていると思いま
 すが、有事法制3法で「反撃」に至ることまでが許容されるの
 ではないでしょうか。
  もしそうだとすれば、これらの事態を理由とする日本の侵略
 的海外派兵の可能性が有事法制3法によって明確に開かれ
 たことになります。事態が発生すれば国民世論は沸騰してお
 り、手続き規定によって自衛隊の海外派兵を抑えることは不
 可能でしょう。

2 3法のうちの「武力攻撃事態対処法」において国民の協力
 義務が定められています(第8条)。一方、武力攻撃事態等
 への対処において憲法の保障する国民の自由と権利の尊重
 の必要が定められています(第3条第4項)。
  戦争反対の言論、行動は第8条によって制限されるのでしょ
 うか、第3条第4項によって許容されるのでしょうか。
  明確な規定がなければ、社会の雰囲気によって戦争反対の
 言論、行動は封殺される恐れがあります。かつての「非国民」
 の復活という恐れです。

 そのほか「周辺事態法」に基づきアメリカの後方支援に当たっ
ている自衛隊が攻撃された場合の対処といったすでに指摘され
ている問題もあります。
 いずれにしろ国民保護法制の不十分性などという問題は、整
備されるべき法律的問題ではありますが、有事法制3法の本質
的な問題ではないと考えられます。
 本質的問題は、「自衛」の名のもとにおける「侵略」というかつて
の道をを法律的に抑止できているかということです。