2003年6月16日

 いつの頃からでしょうか、「食物連鎖」ということを2次元も3次
元も複雑化した「生態系」という言葉が一般的になりました。

 この「生態系」という考え方に気になるところがあります。

 それは、「生態系に」における時間の要素です。
 「生態系」においては時間の要素がないか、あるいは同じ時間
が繰り返すと想定されているのではないでしょうか。
 すなわち、ある「生態系」が成立していれば、外部から人為的要
素が介入しないかぎり、「生態系」は不変の状態に維持されると
考えられているか、時間とともに「生態系」は変移するが、人為的
要素により乱されないかぎり、元に戻って再び変移を繰り返すと
考えられていると思われるのです。

 「生態系」を究めれば究めるほど、「生態系」が精妙に造られて
いることが分かってくるので、その精妙さに圧倒されて、そのよう
な「信仰」を導いてしまうと思われます。

 しかし、「自然史」を遡れば、人為的要素以外の要素により「生
態系」がその秩序を失ってきたことは明らかです。
 「信仰」は事実をもって破られ、その不成立を断定されています。
 「生態系」の尊重を唱え、「生態系」を維持するために「生態系」
への人為的要素の介入の縮小を求める思想は、理論的再構築を
迫られているのです。

 「生態系」に対する人為的要素の影響は、おそらく「生態系」の変
化のスピードを速めたり遅くしたりするところにあると思われます。
 そのスピードの変化をどう評価するかということが問題となります
が、その評価に当たっては、生態系尊重論者は好まぬところの人
間的尺度、すなわち人間にとって都合がいいか悪いか、を持ち出
してこざるをえないのではないでしょうか。