2009年8月28日
先日、何の脈絡もなさそうな2つの質問が同じ方から同時に私に
発せられました。
すなわち、
問1 日本は多くの中国文化を受容してきているが、中国文化に
ある椅子の生活が西洋文化導入まで日本で普及しなかった
のは何故か?
問2 弦楽器にはギターのように弦をはじくものとバイオリンのよ
うに弓でこするものがあるが、弓でこするタイプのものが日本
で普及しなかったのは何故か?
問1に対しては即座に、高温多湿の日本の家屋では床が高く、か
つ板敷き又は畳であり、人間の体重を4点のみで支える椅子では
床が耐えられないためである、と答えることができました。
石の床の大寺院の講堂では昔から椅子が使われているという例
外もあり、その答は正しかったと思われます。
問2の答はなかなか分かりませんでした。
弓でこするタイプの弦楽器には東洋に胡弓があり、富山県八尾町
の「おわら風の盆」で使われているのが有名ですが、ここで胡弓が
使われるようになったのは明治も後期になってからのことのようで
す。
胡弓とバイオリンはルーツは同じ中央アジアの騎馬民族のもので、
西に行ってバイオリン、東に行って胡弓となったようです。ちなみに
胡弓もバイオリンも弓に使われているのは馬の尻尾の毛だそうです。
琵琶、琴、三味線と、はじくタイプの弦楽器はいろいろと日本に普
及していたのに、弓でこするタイプの弦楽器は何故普及しなかった
のでしょうか?
先般、突然、答がひらめきました。しかも、その答は問1の答と密
接に関連するものだったのです。
質問を提起した方もその関連にはまったく意識はなかったと思い
ます。
弓でこするタイプの弦楽器は、腕を大きく動かして演奏するという
その動作のため、座り込んで演奏するのはむずかしく、立ったまま、
あるいは椅子に座って演奏するのが適当なのです。
すなわち、弓でこするタイプの弦楽器は、座って生活する日本の家
屋、要するにお座敷には適合しないから、というのが問2の答です。
問1と問2の答の思いもかけない関連に、少なからず感動を覚えま
した。
(もしかすると、弓でこするタイプの弦楽器は大きな音が出るので、お
座敷には向かないという理由も追加的にあるのかもしれません。)