2004年1月21日

(前号から続く)

 砂漠の戦争においては馬の戦闘能力をいかに消耗させずに戦場まで
> 運ぶかが勝敗を決める非常に重要な要素でした。ラクダも戦闘に使わ
> れましたが、機動性という意味では馬の戦闘能力のほうが圧倒的でした。
>  したがって、ラクダは馬を戦場に派遣するために必要な糧秣等の輸送
> を担当し、どれだけのラクダ部隊を有するかということは戦闘能力を維持
> した馬をどれだけ戦場に派遣できるかという軍隊の兵站能力を示すもの
> でした。
>  アラブの馬をジェット戦闘機だとすれば、ラクダ部隊は航空母艦の役割
> を果たしていたということになります。
>
>  時代は移り、軍用としての馬の意義は皆無に等しくなり、馬といえば競
> 馬の時代となりました。そして、スピードに優れたサラブレッドの全盛の時
> 代となりました。
>  サラブレッドは性質が過敏で、気性が激しく、軍用馬としてはアラブの馬
> に比べて難点がありました。しかし、スピードを競うという点では何よりもサ
> ラブレッドだったのです。
>
>  サラブレッドとは父母ともにイギリスの血統書「ゼネラル・スタッド・ブック」
> に登録された馬から生まれたものをいうのですが、もともとはイギリスの在
> 来種とアラブの馬の交配から創り出された馬です。
>  そして、すべてのサラブレッドはその父系の血統をさかのぼれば、3頭の
> アラブの牡馬、バイアリー・ターク、ダーレー・アラビアン、ゴドルフィン・アラ
> ビアンに到達します。
>
>  スピードがもっぱら問題となる競馬の世界ではサラブレッドにその席を譲
> った感のあるアラブの馬ですが、戦場で示されたその能力から明らかなよ
> うに人間との付き合いという総合力ではアラブの馬が最高の評価を受けて
> います。日本でも最近始められたエンデュランス(耐久競技、その距離は最
> 長160キロに及ぶ)で最適とされているのがアラブの馬であることは、この
> ことの何よりの象徴でしょう。
>
>  日本で現在繋養されている純血アラブとしては、平成7年に皇太子殿下
> が中東歴訪時にオマーンのカブス国王から贈られた「アハージージュ」が有
> 名で、那須の御料牧場に繋養されています。
>  また、中央競馬会が平成6年にドバイ国際騎手チャレンジ競走の記念と
> してマクツーム殿下から寄贈を受けた純血アラブ「ベイエミネンス」は、世
> 田谷の馬事公苑に繋養されており、演技を披露するなどして人々に親しま
> れています。
>  
>  日本における純血アラブの繋養は現在わずかな頭数にすぎないようです
> が、競馬の隆盛が乗馬などの馬の文化一般の広がりにつながっていけば、
> 純血アラブの導入は今後進んでいくでしょう。
>  馬への愛の最高の到達点にアラブの馬がいるのです。
>
>                    
>