2004年11月20日

 11月17日、自民党憲法調査会は憲法改正草案大綱素案をまとめ
ました。来年11月に党の憲法改正草案として正式決定する予定だそ
うです。
 各党もこれに対して対案を出したり、反対論を整理したり、憲法改正
問題について動きを強めることになるでしょう。
 テレビや新聞で果てしない議論が展開されることになり、否応なしに
我々はこの渦の中に巻き込まれることにならざるをえません。
 そして、ひとりひとりが客観的に冷静に判断できるように、この問題
に関する論点がきちっと整理されて、我々の前に提供されるかどうか、
従来の傾向からすると悲観的になってしまいます。

 今通信では自民党憲法調査会が提起した改正事項のひとつひとつ
に立ち入ることは控え、これから展開されるであろう議論を客観的に
冷静に受けとめることができるように、改正事項を評価するにあたって
の3つの基準を提案しておきたいと思います。

 3つの基準は、「正義」「生気」「便宜」です。
 「正義」は、言うまでもなく、改正事項が「正義」に向かっているか、そ
れとも「正義」から後退しているかという基準です。
 「生気」は、改正事項が社会の雰囲気を生き生きとした方向に導くの
か、雰囲気を沈滞の方向に導くのかという基準です。
 「便宜」は、「便宜的に」とか「便宜主義」とか言われる場合の「まにあ
わせ」「取り敢えずの」という意味ではなく、「たよりよきこと」という意味
で、提案される社会のシステムがよりよく機能するシステムになってい
るかどうかという基準です。
 
 そして、これらの3つの基準は互いに相矛盾する場合があると考えて
おかなければなりませんが、その場合の優先順位は、掲げたとおり「正
義」「生気」「便宜」の順となると思います。
 「正義なき生気「正義なき便宜」「生気なき便宜」はいずれも否定され
るべきだからです。

 これらの基準に同じように立ったとしても、ひとりひとりの判断は違っ
てくるでしょう。しかし、少なくとも共通の土俵に上がっていれば、そこで
噛み合った議論の可能性が生まれてくると思います。