2005年3月31日
村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」「海辺のカフカ」を読みました。
それまでは、取り立てて言うほどの理由はなく、何となく村上春樹は
読んできませんでした。
2作品とも長編ですが、一気に読んでしまえる面白さでした。
そして、団塊の世代として、この2作品を世代論的に読んでいる自
分に気がついたのでした。
すなわち、この2作品の基本構造の1つとして、若い世代が団塊の
世代に対して人生、社会、宇宙のことなどを質問する、その質問に団
塊の世代が答える、という構造がある、これはほとんど世代が違う教
師と生徒の対話である、ということに気がついたのです。
「団塊の世代よ、恥を知れ!」などと非難される団塊の世代の代表
として、村上春樹が必死になって答えています。
村上春樹は、若い世代が抱いているであろう問題を一生懸命推測
し、自分はそういう問題についてこういうふうに考えているんだ、団塊
の世代はおいしいところだけを食べてしまっているわけではないんだ、
君たちが考えている問題を同じように抱えて、こんな考えに至ってい
るんだ、と弁明しつつ、答えています。そういう小説だと読めたのです。
村上春樹の作品が若い世代に歓迎されていることは、そういう意味
で団塊の世代として喜ばしきことと考えられます。
しかし、当の団塊の世代が村上春樹の作品に対して大した反応を
示さないことは、団塊の世代の限界を、「恥を知れ!」といわれても弁
明できない団塊の世代の情けなさを表しているとも言えると考えられ
ます。