2005年9月21日


 宗教とは何かについて、いろいろな立場からいろいろな
定義があるのだと思いますが、次のような定義を思いつき
ました。

 人間の様々な属性の中で肯定的な感じを与えるものとし
て「愛」あるいは「慈悲心」というものがあります。
 この「愛」あるいは「慈悲心」が場所的、時間的、立場的
制約を超えて絶対的に、普遍的に肯定的内容をもつもの
であること、「価値」であることを、サイエンスの立場から証
明することはできません。
 もう少し言えば、「価値自由」をたてまえとするサイエンス
の立場から明らかにすることができるのは、「愛」あるいは
「慈悲心」が人間の世界での原理であるにとどまります。
 すなわち、サイエンスの立場から「愛」あるいは「慈悲心」
の「価値」を説明するためには、この世のあらゆる存在の
中で人間こそ至上の存在であることを前提にする必要が
あります。

 これに対し、そのような人間原理の不確かさを克服し、「
愛」あるいは「慈悲心」が人間原理にとどまる限定的なもの
ではなく、宇宙原理そのもの又は宇宙原理に基づくもので
あることを解(説)こうとする試みが宗教である、という定義
です。

 この定義により、宗教は、基本的に言語的活動であるサ
イエンスを超えて、非言語的なこと(禅では「不立文字」とい
う)である「悟り」「秘蹟(=サクラメント)」「神秘体験」といっ
たものを必要とすることになります。