2006年5月31日

 

 NHK教育テレビで28日(日)の早朝、アイヌ活動家萱野茂氏が出演している「こころの時代・祖母が話してくれたアイヌの神々」が再放送されていました。朝日新聞29日(月)夕刊の「惜別」というページに「アイヌ民族初の国会議員・萱野茂さん」が掲載され、氏は5月6日に逝去された(享年79歳)とのことでした。NHKの放送は逝去を悼んでの再放送だったと思われます。

 さて、このNHK教育テレビでの萱野氏の発言で次のような事実があったことに驚かされました。

 すなわち、昭和20年代、戦後の時期にアイヌの人々の中に日本名を持ちつつも、なおアイヌ名を堅持している人たちがいたということ、そして仲間内や家庭ではアイヌ語で話していた人たちがいたということです。アイヌの人々への日本への同化政策が明治時代に強行されたことは知っていました。そして、アイヌ人差別問題がその後長く続いて今日に至っていることも知っていましたが、アイヌ人名、アイヌ語がそこまで維持されていたとはまったく思いませんでした。

 民族を征服し、その伝統・文化を破壊するということが決して遠い過去に行われたのではなく、ついつい最近のことであることを知って驚愕したのでした。

 なお、萱野茂氏は、山、川、原野などの自然に対する所有権という観念はアイヌ民族には存在していなかった、それゆえにそれらをすべて日本人に奪われることになったと指摘していました。我々が後生大事にしている近代的所有権というものの特殊歴史性をあらためて感じさせられました。