2006年11月18日

 読書の記録をつけていますが、つまらなくて途中で読むのをやめた本、読み続ける価値がないと判断した本などは、「読書リスト」に載せる価値なきものとして「読書リスト非掲載リスト」というのを作って記録しています。

 今回、徳富蘇峰の「終戦後日記」を「読書リスト非掲載リスト」に加えることになりました。

 徳富蘇峰といえば、太平洋戦争時において大日本言論報国会会長として積極的戦争協力言論活動を行い、敗戦時は病気のためにかろうじてA級戦犯とならずにすんだという人ですが、戦前に文化勲章を受章している明治、大正、昭和を通じて活躍した大言論人です。戦前の最高峰の知性のひとりともいうべき蘇峰が、しかも戦争に積極的に加担した蘇峰が、敗戦に当たり語ることには耳を傾けるべき何ごとかがあるであろうとの期待のもとにこの本を読み始めたのでした。

 期待は完全に裏切られました。蘇峰は、言葉を選びながらも、昭和天皇が積極的に前面に出て戦争を指導しなかったことを非難し、また当時の政府指導者たちが戦争完遂の意欲が不十分であったことに憤慨し、それが敗戦の原因だったと叫ぶばかりなのです。

 戦前の最高峰の知性がこのように非科学的精神論者であったことを実に情けなく思いました。そして言論界の状況がそのようなものであったことが戦前の日本を誤った道に導くことになったにちがいないと、本書を読んで思わされたのでした。

 これ以上蘇峰の語ることに耳を傾けても何も得るものはないと判断し、本書の「読書リスト非掲載リスト」行きを決めました。