2007年2月28日
入学式での君が代斉唱のピアノ伴奏を拒否した小学校の音楽教師に対する伴奏せよとの職務命令が合憲か違憲かの最高裁判決が昨日ありました。5人の裁判官の4対1の多数決で君が代伴奏の職務命令は合憲とされ、反対した藤田宙靖裁判官の主張は反対意見として判決に記載されたそうです。
判決そのものは読んでおらず、新聞記事からの推測ですが、合憲であるとする理由がすこぶるあやしく、権威あるべき最高裁がこのようなことでいいのだろうかと強い懸念を感じています。
判決理由の中核は、君が代斉唱は広く一般に行われているものであり、君が代伴奏の職務命令は「特定の思想を持つことを強制、禁止したり、特定の思想の有無の告白を強要するものではない」ので、「思想・良心の自由」を保障する憲法第19条に違反するものではないというところにあるようです。そうだとすると、最高裁は、君が代斉唱は特定の思想によるものではなく、広く一般に行われている慣習にすぎないようなものと言っていることになります。広く一般に行われている慣習にすぎないようなものを行うために何故思想・良心を理由にそれを嫌がる教師に職務命令を発しなければならないのでしょうか?そんな慣習にすぎないようなもののために職務命令に従わなかった教師に対して何故戒告処分まで行わなければならないのでしょうか?最高裁はこのことについて致命的に説明を欠いているように思われます。
そして、最高裁の優秀な裁判官たちがそのことに気づかないはずはなく、そこには取り扱われるべき論点を回避しようとする意識的な態度があると思われます。
このような最高裁判決は、左側からはもちろんのこと、君が代を大事に思う右側からも歓迎されないにちがいありません。
なお、最高裁判決において、職務命令が思想・良心の自由を侵しているか否かについて命令者側の意図からのみ判断され、命令を受ける者の立場に立った判断がなされていないということについては、判決に記載された藤田裁判官の反対意見のとおりだと思います。すなわち、反対意見には「(職務命令が)当人(命令を受けた者)の信念そのものへの直接的抑圧となることは明白」と書かれているとのことなのです。