2010年6月7日(出来たて)
人それぞれ、いろんなことを言っていますが、経済政策の選択の幅は極めて狭いと考えられます。
しかし、その狭い幅の中での選択について、2つの大きな路線が決着がつかないままの状態におかれているので、民主党内において、あるいは他の野党も巻き込んで、路線の対立が早晩先鋭化してくることが予想されます。
2つの路線を名づければ、一方は「マーケットメカニズム信頼派」「民間活力重視派」「競争経済促進派」、批判的立場から名づければ「市場原理主義派」ということになり、他方は「マーケットメカニズム不信派」「格差是正派」「社会保障重視派」、批判的立場から名づければ「ばらまき型政策派」ということになるでしょう。
先の衆院選の結果にかかわらず、いわゆる小泉・竹中路線は今でも確実に存命で、経済界で依然として強い支持があるのであり、それが前者です(以下、「市場派」と呼びます)。
そして、階級政党たることを本質とする社会党・共産党に加えて、この間急激に疲弊した地方への経済支援を要請する保守の人々が後者です(以下、「格差是正派」と呼びます)。
市場派と格差是正派は、政党ごとにきれいに分かれているのではなく、各党の中に両派が入り乱れて存在しています。同一人物の中に両方の要素がある場合も見られような気がします。
いずれにしても、両派は「政治と金の問題」「ムダの排除」では一致できるのであり、その取り敢えずの成果が今回の小沢排除内閣の成立なのです。
市場派の弱点は弱肉強食、格差拡大が必至という点であり、格差是正派の弱点は財政規模拡大を抑制できない、かつ大きな資金の流れはそこに利権を呼ぶ傾向があるということです。
小泉元首相が「自民党をぶっ壊す」と言ったのは、自民党の中の格差是正派的体質をぶっ壊すと言ったのであり、民主党内の小沢対反小沢の戦いは「市場派対格差是正派」の戦いという要素を含んでいます。
陰に陽に、この戦いが、これからまた、いろいろ形を変えながら展開していくでしょう。
ある意味では、「政治と金の問題」「ムダの排除」という政策以前の問題から脱却して、ここで初めて、政策らしい政策の選択のスタート台に立つことができたと言えると思います。
国民は、マスコミが設定する表面的な政争の枠組みに惑わせられることなく、自分が「市場派」の立場に立つのか「格差是正派」の立場に立つのかの判断の下で、事態を冷静に見極めなければなりません。
いずれにしても当初述べたように選択の幅は小さいのですが……。