2007年8月19日
安倍首相は19日からのアジア3カ国訪問の中でインドでパール判事の遺族と面会する予定だそうです。
「戦後レジームからの脱却」を標榜して、気に入らないことを何でも「戦後レジーム」としてしまう傾向のある首相ですが、東京裁判に象徴される太平洋戦争評価こそ「戦後レジーム」の最たるもの、いわゆる「自虐史観」として首相のターゲットになっていることは間違いありません。そして、東京裁判におけるインド代表の裁判官で、唯一A級戦犯全員の無罪を主張したパール判事の存在こそ、首相の考え方を支えるものとして今回の遺族訪問が予定されることになったのでしょう。
しかし、パール判事の意見は、「対象となる行為の後に定められた罪(東京裁判の場合、平和に対する罪、人道に対する罪)によってその行為を罰することはできない」という法律論から被告を無罪とすべきとの意見だったのであって、戦争中の日本軍の残虐行為、非人道的占領地経営などに対しては他の判事たちと比べてむしろ厳しく、パール判事は、法律論的には無罪としていたものの、日本の戦争指導者を倫理的に厳しく非難していた人であったのです。
太平洋戦争の正当性を少しでも主張したい安倍首相がこのことについての十分な自覚を持ちつつパール判事の遺族との面会を決めたとは到底思えません。またしても首相にふさわしからぬ浅薄な判断がなされたということだと思います。