2010年4月29日(出来たて)

  「不正な献金や脱税などの実質的な犯罪はなかったと証明された。」
 先般の検察の不起訴決定を受けての小沢一郎民主党幹事長の発言です。
 
 この発言は、一見ウソはないように聞こえます。
 法律のプロたる検察が捜査をして起訴に至りませんでした。一般の刑法犯被疑者の場合には、特定の事案についてシロかクロかが問われ、グレーもシロとみなされて不起訴処分となり、一応、事件としては以上おしまいです。
 小沢幹事長は、巧みに一般の刑法犯被疑者と同じ立場に自分自身をおとしめて、自分はシロ、以上終わりと言っているのです。
 プロの検察がシロだと言っているのだから、小沢本人があらためて(アマチュアの)国会等で更なる説明をする必要がないと言っているのです。

 しかし、明らかであることは、捜査の結果、立件に足るだけの証拠を見出せなかったということに尽きるのであって、特捜の諸君も自分たちの捜査の結果、小沢幹事長のすべてについて身の潔白を証明することになるのだとされたら、ずいぶんと心外でしょう。自分たちはそんなことまではしていませんと言うでしょう。

 そして、改めて指摘するまでもなく、小沢幹事長は一般の刑法犯被疑者とは異なり、政治家として政治的道義的責任も負っているのであり、ダーク・グレーは政治的にはシロとみなすわけにはいかないのです。

 小沢幹事長の大胆で賢いレトリックも、今回の検察審査会の決定から起訴に至れば、アイデア賞にとどまって一巻の終わりです。
 また、仮に最終的に起訴に至ることがなかったとしても、正直な国民を欺くこのようなレトリックを大胆に使用するという体質では政治家として失格としなければなりません。

 「水に落ちた犬を打つ」(魯迅)のは好むところではありませんが、政治的混乱の早期脱却のため、打たれるべきは一刻も早く打たれるべきであると考える次第です。