2010年3月24日(出来たて)



 先日のアカデミー賞で6部門に入賞し、ライバルの3D映画「アバター」を圧倒した映画「ハートロッカー(the Hurt Locker)」、その題名の「ハートロッカー」とはどういう意味なのでしょう?
 ウイキペディアによれば「アメリカ軍の隠語で『苦痛の極限地帯』『棺桶』」となっていますが、ピンときません。
 辞書によれば、「hurt」は「痛み、けが、負傷、(精神的)苦痛(の原因)」、「locker」は「錠をおろす人、戸棚、冷凍食品貯蔵庫」などとなっており、それが「苦痛の極限地帯」や「棺桶」とは、もちろん関連はするものの、ストレートには結びつきません。
 アメリカの軍人に聞けば、直ちにわかるはずのことですが、ちょっと推定してみました。
 主人公はイラクに派遣された米軍の爆弾処理班の軍曹。前任者は罠にはまって爆死していますし、作業中の狙撃の危険もあり、爆弾処理は死と隣り合わせの極端に危険な仕事です。その仕事を、彼は肝っ玉の据わった、豪胆な、勇気に満ちた態度で、確実に処理していきます。豪放磊落、強靭な精神を周りには感じさせます。
 しかし、彼の友達になったイラクの少年の無残な死(殺された死体の腹に爆弾が仕掛けられる・実は)をはじめとする惨たらしい死の充満、否定できないであろう彼自身の恐怖、簡単な関係ではない本国にいる「妻子」等々、彼自身の内面は実は深く傷ついています。
 映画は間違いなく、この彼の外面(=陽)と内面(=陰)の落差を描き出すことを課題としています。
 したがって、「ハートロッカー」とは「内面の深い傷をロックして表には出さず、外面的には陽気に堂々と振舞う人間」をいっているのではないでしょうか。
 そうして見ると、ロボットのような防爆服を着用して、大またでいさぎよく爆弾処理の現場に向かうラストシーンの主人公の姿がひとしお印象的に感じられます。