2008年9月9日

 バブル崩壊時、僕は「日本経済が回復するには30年かかる」と言い回っていました。30年に明確な根拠はありませんでした。第1次オイルショック時、当時の福田首相が「日本経済、全治3年」と診断し発言していたので、日本経済にとってバブル崩壊の意味は、オイルショックと比較にならないくらい大きい、ということを主張するため、敢えて10倍の30年としたのです。

 以来20年弱が経過しました。回復の兆しは一向に見えてきません。ある意味では当然のことです。バブル期の病が、その病の何たるかが明らかにされないまま、引き続いているからです。

 病を最も的確に表わしている病名は「カジノ資本主義」という言葉だと思います。利益を生み出すには、物・サービスの生産、またはその流通によるというまっとうな方法以外に金融と流通まがいの転売による方法があります。流通まがいの転売の典型は不動産ですから、以下わかりやすく不動産ということにします。日本経済はバブル期を通じて、それまでの生産・流通によって利益を得る経済から金融と不動産によって利益を得ようとする経済に変質してしまったのです。当たれば儲け、当たらなければ損という経済の博打化、すなわちこれが「カジノ資本主義化」です。

 日本経済は「生産」に比較優位(他国に比べた生産性の高さ)があり、バブル期前はその比較優位の下で経済成長を遂げていました。しかし、バブル期において、容易に利益を上げられる金融・不動産分野へと経済の方向を変えてしまったのです。

 生産と流通に比べて金融と不動産は、創業に当たってのノウハウの獲得が容易であるというのが特徴です。(あなたが100億の資金を持ったとして、その資金で不動産業を営む場合と製鉄業を営む場合との創業の困難を想像してみてください。)そして、金融と不動産では、創業時の資金量が、まずは勝敗を決する第1条件です。日本経済にこの分野における比較優位はありません。むしろ不得意ではないかとの指摘があるくらいです。にもかかわらず、資金の豊富なこと(バブル・マネーの存在)が誤認を招いたのです。

 現時点で「カジノ資本主義化」に対する十分な自覚と反省があるとは思えません。「全治30年」とすればあと10数年、僕のあてずっぽうの予想が当たって日本経済はあと10数年のうちの回復の光明を見ることができないかもしれません。いや、それはむしろ楽観論で、もしかすると永久に?