2009年10月2日



 集団内部の秩序感を醸成するため、外部に異界を設定する方法とともに、内部に異分子をでっち上げ、それを排除するような動きを作るという方法があります。
 異分子を排除する運動に加わることにより、集団の秩序のために貢献しているという気分を持ち、現在あるいは将来の秩序の存在を確信できます。そして、集団内部のものであるというアイデンティティを獲得することができます。
 
 現代日本においても秩序への不安が充満しており、アイデンティティの危機があり、秩序感を回復するための内部異分子でっち上げが現に行われており、今後も新たな内部異分子がでっち上げられると思われます。
 
 内部異分子は、不吉な存在として忌み嫌われ、遠ざけられ、排除される存在である場合もありますし、ナンセンスな存在として軽蔑され、笑われ、人々に優越感を与える存在である場合もあります。
 内部異分子はそのような特別な存在であるがゆえ、一定の注目を浴び、一定の商品価値を持つことになるので、高い評価を受けているがごとき外見を呈することもあります。
 そのような役割を果たしてきた中世ヨーロッパの魔女、近世日本民話の「阿呆」と並ぶ現代日本の内部異分子として、次のような例を上げられます。

 すなわち、「霞ヶ関官僚」「政治家」「芸能人」「いわゆる進歩的知識人」です。
 経済不調その他世の中がうまくいかない不吉の原因者として「金融」の世界の住人が今後の有力な候補者です。

 内部異分子とされるグループは、集団構成員の秩序感醸成・アイデンティティ獲得のための犠牲の羊たちであり、決して社会科学的分析の結果抽出されたものではありません。
 内部異分子の排除が真の秩序崩壊に至らないように、内部異分子とされるグループのプラス面マイナス面の客観的機能が明らかにされなければなりません。