ゆずあんの観劇ブログ

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楽しみにしていました。ミュージカル『パッション』おそらく『エリザベート』の次の作品ということもあって前売り完売の人気作。こんなに新国立の中劇場が埋まってるの初めて見ました。端から端まで入ってる⁉︎みたいな。今までどんだけ入り悪かったのだろうか。汗

さて肝心な内容ですが…
ちと難しくまた聞き入るメロディーではありますが、難しいので口ずさむことはできず、キャッチーさに欠けます。また物語の登場人物の感情が複雑なので、王道ミュージカルのようにすっきりはっきりとはしてくれません。でもミュージカルらしくスパッと心が決まったりする。だからついていくのが大変な、ストレートプレイに慣れている人でもなかなか難しいミュージカルかもしれません。
それでもこの内容は私は面白いなぁと。でもこの面白さを伝える方法はもっとあったのでは?と思うのです。

醜い(そんなことよりも私が問題だと思うのは理性なくすべてを体当たりでぶつけてくること)フォスカに思いを寄せられ、最愛の恋人だが人妻であるクララとの間で揺れる、若く美しい軍人のジョルジオ、やがて彼は次第に心を病み…

私はこの“心を病み”がポイントだと思うのであらすじに入れてみました。というのもジョルジオは明らかに彼の“普通”の状態からは外れていっているから。新しく辺鄙な土地へ赴任し、もともと性に合わない粗野な軍人たちばかり、最愛の恋人が人妻でありどんなに愛しても希望が持てないこと、それに加えてストーカー以上にあからさまにつきまとうフォスカ。心を病むポイントは山のようにあるのです。だから私たちも彼は心が疲れているんだ…と思いながら見る必要があると思うのですが、それがわかるような見た目的な演出(例えば照明をもう少しダークな雰囲気にするとか)がなく、ストレートプレイのようにシンプルな演出なのです。そういえば今回の演出の宮田さん、私は宮田さんのストレートプレイの演出は好きですが、ミュージカル系の演出はあまりしっくりこなかったことを思い出しました。そう!宮田さんはものすごく役者の力を信じている、だから役者への演技指導はとても素晴らしいと思うのです。でも、この中劇場のサイズとミュージカルという媒体はもう少し派手な見せ方も必要だと私は思うのです!↓力説以下スタート

この演出はジョルジオが精神的に不安定になっていく、だからフォスカに走る…という流れを意図的に見せない…ということなのかも知れない。でもクララとの愛を真実の愛ではない、だからやめなければならない!と断定してしまうくらい彼は追い込まれていたと思うのです。それに私の大好きなシェイクスピアもよく言っていますが、恋は病なのです。だから恋はいわば心の病。だからそれは普通のことで、それを見せてもいいと思うのです。そうやって不安定になっていく場面ははちょうど楽曲も心地いい音に少しずつ不協和音が混じっている…だからそれを照明でもう少し見せてあげる、フォスカの病床を自ら訪ねるシーンもラストだけれどもう少し暗く怪しく作る(ついに彼は狂ったのだ…と見せてしまっても悪くないと思う)、そして決闘後の叫び…とうまく繋がると思うのです。それで、ラストは今ままのあの眩しい明るさの中で、観客に問いかける。
"彼を狂ってるとあなた達は思っているかも知れないけれど、でも真実の愛とは本当にあなたが思うものなのだろうか"
これが最終的なこの物語の終わり。この演出どうでしょう。大元はどんな演出だったんだろう?
キャストの皆さんはこの難解な歌を見事に歌いこなしていたし、ジョルジオの精神状態を感じたのは井上さんがときおり急にジョルジオらしくなく荒々しくなるから。そこをもっと伝えるといいのではと思った。フォスカのシルビアさんは本当に怖かった。弱々しい喋り方から、急にギラリと目が光り、ジョルジオを抑え込む。きっと怖いんだろうなぁ相手をするのは。ただ、セリフに注目すると実はフォスカは子供のようにまっすぐに欲望を口にする。それをもう少し子供のように見せてもいいのでは?と思う。今はリアルに病床の人にありがちな無理をした儚げな笑顔でジョルジオを屈伏させているが、それはこれまでの境遇と自分の病状を知る人が自分に冷たくできないと知っている、計算高い女にも見えてしまう気がする。だからもっと他の役作りもあるのでは?と思う。あと、これは演出の一つだが、ラストに出てくるフォスカが病気メイクでもなく美しいのはどーしたことだ!?これじゃあ、例えジョルジオが狂ったのではなく、理性を保ち醜いフォスカを愛したという、そういう真実の物語をそれこそ愚弄しているではないか?!と私は思う。そりゃ私だってシルビアさんが綺麗なのは知っているよ!だからあのメイクでも十分美しいよ。だからそのまま出して欲しかった。
和音さんは凛とした美しさ、でも人妻ならではの読めなさと強さと大人な雰囲気を持ち、天使のようにでも、大人の女としてジョルジオを翻弄していて私も翻弄されてしまった。彼女はこれからも義務を重んじちゃんと生きていけそうだ。

この演出が他の人だったら、もう少しミュージカルファン受けは良かったのでは?と思う次第です。