いちごは逃さないあんず。


あんずが、姉の夢に出てきた。

遠くで、ボール遊びをしていた。

あんずは、ボールで遊ぶのがとても好き。


あんず、母に初めてボールを買ってもらった。

赤い、柔らかめの、噛んだらピーピー鳴るやつ。

とにかく、ピーピー鳴るのが許せない。

ボールを買ってもらったら、まずはそこ。

音を出す部分をやっつけたい。

噛んで噛んで、笛の部分を徹底攻撃。

音が鳴るのが面白いと思うんだけどなあ。

どうしても許せないらしい。

いじめていじめて、笛の部分を壊すまでいじめる。


そこで飼い主らは考えた。


音が鳴るボールは、お散歩用にしよう。

隠しておいて、たまにしか使えないようにしよう。

お散歩で外で遊ぶ時だけ、新しいボールを使おう。

常にあんずに持たせたら、また壊されちゃう。

もう壊されたやつを、日常使いにしよう。


新しい、音の鳴るボールは、お散歩用のバッグに忍ばせることにした。


これで一件落着。

そう思ったのも束の間。

お散歩バッグに忍ばせたボール、何かのタイミングで音が鳴る。

例えば、お散歩バッグを片付けるとき。


「プピッ」


あんずは聞き逃さない。

「今、ボールの音がした。」

「ママ、どこに隠したの。」

「あんず知ってるよ。隠したんでしょ。」

とにかく鋭い。

あんずの目線が、問い詰めてくる。


もしくは、洗うために洗面台に置いたボール。

匂いで発覚する。

「この台の上にボールあるでしょ。」

「あんず、見えないけど匂いでわかる。」

「抱っこして確認させて。」

とことん追求が厳しい。


あんずの聴覚と嗅覚でボールが奪われることもあれば、

あんずの嗅覚良すぎるがゆえに残り香に騙されて、飼い主が勝利することもある。

母「ここにはボールはないよー。そんなに言うなら見てみたらいいよ(前は置いてあったけどもう隠したんだよな。。ふふふ)」

あんず「おかしいな…匂いがするのにな…」



そんなこんな、あんずはボール遊びが好き。

遠くの方で、ボール遊びをしていた。

走ってボールを追いかけていた。

楽しそうだったなあ。


「それなりに楽しくやってるからねー」

「心配しないでねー」


多分、そう言いたかったんだろうなあ。

あんずの方が、結局は上手なんだなあ。