​可愛い顔して中身はブラック。


母の夢に、あんずが出てきた。

あんずとお別れして以来、初めての登場。


とことこと、母の下に歩いてきた。

母にお尻を向けた。

うんちをした。

去っていった。


あんずが粗相をするとき、それは大体、不満があるときである。

理不尽に怒られた、寂しい思いをした、などなど。


あんずは、我々飼い主があんずのうんちを踏むと嫌がるのを知っている。

だからこそ、

飼い主らが通る道に(踏んでもらうために)

通る可能性の高い道の真ん中に(なるべく高い確率で踏んでもらうために)

道に敷いてあるカーペットの濃い茶色の部分に(避けずにちゃんと踏んでもらうために)

わざわざうんちをするのだ。

「みんな、あんずのうんち踏んじゃえ」

そういうことだ。


そんなのたまたまじゃない?

考えすぎだよ。

そう思ったそこのあなた。

では、一つエピソードを紹介しましょう。


ある日、我が家にルンバがやってきた。

華麗に床をお掃除してくれて、母大喜び。

対して、あんずテンション爆下がり。

どうやら、ルンバを敵視している模様。

吠えたり、お掃除を邪魔したりしている。

我が家への新入りという認識なのか。

そう思って母がルンバを眺めていると。

衝撃の光景を目にした。


あんずが、踏ん張っている。

トイレではなく、フローリングで。

あんずのお尻が向いている先は、ルンバの進路。

うんちがフローリングに落ちた。

あんずは、サッと避けた。

ルンバは、そのまま直進した。

母がうんちを拾う間も無く、直進した。


母は愕然とした。

あんずは、ルンバに嫌がらせをしたのだ。

ルンバにうんちを踏ませたのだ。

犬がルンバに焼きもちなんて。

ああ、新品のルンバにうんちが巻き込まれた。

大体、うんちを踏ませて嫌がらせをするなんて、どんな思考してるんだこの犬。

母の頭に、いろんな思いが巡った。


これが我が家で語り継がれる、

あんずルンバ事件である。



というわけで、

あんずは今、不満があるに違いない。

飼い主らの日々の会話に、もっとあんずの話題を出せ、といったところだろう。

飼い主らは、常にあんずファーストを要求されるのだ。