あなたを探して②
間違いない!弘也の店だ!
何故ここに?また時空を超えたのか?
今入ったら弘也に会えるかもしれない。
ドッドッドッド
美鈴の胸の鼓動が激しく鳴る。
周りに聞こえるのではないかと思えるほど緊張していた
自動ドアが開く…
その瞬間、激しい眩暈がして倒れ込んだ。
どれくらい経ったであろう
意識が戻り起き上がった。
まだふらつく
え?
美鈴はバス停の前にいた。
えっ?
弘也の店は?
あたりを見廻したが、それらしき店はなかった。
立ち並ぶオフィスビルが美鈴を冷ややかに見下ろしていた。
寒い…胸んとこ寒いわ
いつものことか
夢とも現実ともつかない迷路のような空間を
永遠に彷徨い続けるのか
脱離感で力が入らない
でもここで立ち止まってはいられない
美鈴はふらつきながら歩きだす。
ずっと歩いて…いたはずだった
美鈴は電車の中にいた
それも人間の美鈴だ
また人間に戻る瞬間に遭遇した。
遭遇とは言わないか
クスっと笑った
隣に立っていた男性がチラッと美鈴を見て
怪訝な顔をした
慌てて美鈴は口を押さえると
男性に背を向けた
また笑いそう
電車のガタンゴトンの響きが心地よい。
電車はトンネルに入った
ゴー!っという音に変わる
時空を越える時の音に似ているな
美鈴は目を閉じて弘也の笑顔を思い出してた。
美術館で待ち合わせしたあの日
弘也はどうしたのだろう。
あの時すでに時空を超えていたのか
次は新西橋。
車内アナウンスで我にかえる。
美鈴は新西橋で降りた
あれ?何故ここに。
新西橋を通る電車に乗っていたんだ。
新西橋…
あ!一度来ている
LIVE HOUSE
モアンさん…大好きなミュージシャンに
会いに来たんだっけ
モアンさんの歌で癒されていた。
歌聴きたいなぁ
会いたいなぁ
美鈴は猫の姿に戻っていた
新西橋街は人でいっぱいだ。
人の波を縫うように歩いた
匂いを辿りながら歩いた
あ。ここだ
ちょうどLIVEが行われているようだ。
あたりはまだ明るい
今日は昼の部なんだ。
モアンさんいないよね…
拍手の音がする。
終わりかな…残念
しばらく座っていたが歌は聴こえない
やはり終わりだね。
美鈴はLIVE HOUSEから離れようかどうしようか迷っていたら
LIVE HOUSEのドアが開いた。
観客が笑顔いっぱいで出てきた。
美鈴は首をぐーっと伸ばして店の奥を覗いた
知っているミュージシャンのライブだったかなぁ
薄暗く感じる店内の人の顔は
猫の美鈴には全体にモヤがかかったようによく見えない。
鼻をクンクンした。
猫の嗅覚は優れている。
空気中のさまざまなニオイを判別できる。
美鈴は愛おしいニオイをキャッチした
モアン!モアン!
ミャーミャーミャー
店内からファンらしき女子たちが出てきた。
ファン「猫ちゃんどうしたん。なんか訴えてるん?」
店長も出て来た。
「中入っちゃあかんよー」
懐かしい声だ
モアン!モアン!
美鈴はモアンを呼んだ。
ダメかぁ
ドアが閉めかけた時
「ちょっと待って!」
店のカウンターから人影が出てきた
モアン!
ミャーミャーミャー
第19章に続く
