ついにその時が来た

美鈴は鏡の中の自分を見つめながら
ドライヤーで髪を乾かしていた。

この長い髪もいつか黒猫の毛になってしまうのかな

ドライヤーの音がやけに大きく聞こえて思わず止めた。
鼓膜破れそう!

ドライヤー壊れたかしら

…あ。猫の前触れ?


思ったより早く猫に変わってしまうのかも?
それとも精神が病んでしまっているから
おかしなものが見えるのかな
全てが夢であってほしい


生乾きの髪のままキッチンに行き冷蔵庫を開けた
ぎっしり牛乳が入っている。

え。いつ買った?
牛乳ばかり

まっ。いいや。

牛乳のパックを手に取り
ゴクゴクと一気に飲み干した

げふっ

ふう…なんだかやけに眠い
起きたばかりなのに。
ソファに腰をかけて1分もしないうちに
美鈴は眠った

カンカンカンというサイレンの音で目が覚めた

近くで火事かな

どのくらい眠ってたんだろ。
窓の外を見るとまだ明るい。
時計を見たら
あれ?
何分も眠ってないじゃん

頭がボーっとする

窓を開けよう。
立ち上がった

あれ?
なんか変だ。
違和感を覚えながら
窓を開けようと窓に近づく
あ!
窓ガラスに黒猫が映っている

美鈴は手を見た
びっしりと黒い毛で覆われている
顔を触って狼狽える姿が映る
ヘナヘナと床に座り込んだ

しばらくしたら戻るかな
戻らないかな?
このまま猫に?
早すぎるよ

涙がこぼれた

次第にあたりは暗くなり

寂しげな闇に包まれた
月が美鈴を見つめた

11章に続く